JAXA Repository / AIREX 未来へ続く、宙(そら)への英知

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タイトル流体構造連成とモード同定による多自由度翼列フラッター解析の研究
参考URLhttps://doi.org/10.15083/00073031
著者(日)立石, 敦
著者(英)Tateishi, Atsushi
著者所属(日)東京大学
著者所属(英)The University of Tokyo
発行日2015-09-25
発行機関など東京大学
The University of Tokyo
開始ページ1
終了ページ224
刊行年月日2015-09-25
言語jpn
抄録これまで民間航空航空機用ターボファンエンジンは,燃費削減と騒音低減を目的に高バイパス比化とファン翼の大型化が進められ,今後もその傾向は続くものと予想される.大型化によるエンジン重量増加を緩和するために,翼構造に繊維強化プラスチックや中空・薄翼構造が用いられ,軽量化・低剛性化が促進されている.フラッター現象とは,構造振動と空気力が連成して生じる発散的な自励振動現象であり,流体機械において発生することは許されない.フラッター発生を回避するためには一般に翼の剛性を高めればよいが,これは同時に重量増加を意味するため,航空用エンジンにとっては望ましくない.そのため,フラッターの発生点の予測は,エンジンの性能を左右する重要な技術項目といえる.これまで翼列のフラッターは,翼が十分重いため翼振動モード間での空力干渉は小さく,曲げやねじりなど単一のモードで生じるとされ,空力・構造連成に起因する翼振動状態の変化は無視されてきた.プロップファンに代表される軽量・低ソリディティの翼列では,空気力により複数の翼振動モードが連成し,単一モードの検討結果よりフラッター発生流速が低下することが知られている.従って,今後一層の軽量化が予想される航空用エンジンファンのフラッター発生点を適切に予測するためには,複数の翼振動モードと変動流体力が連成した状態を適切に評価する手法が必要になると考えられる.以上の背景のもと,本研究の目的は (1)既存手法の「単一振動モード」の仮定によらず,翼間・翼振動モード間の空力的連成を適切に考慮できる翼列フラッター解析手法を新規に開発すること,(2)提案手法の実問題への応用例を通じ,提案手法が使用できる状況,流体・構造間の連成が性能や振動特性に与える影響や,フラッターの発生機構と関連する流れ現象を明らかにすることを目的とした.目的達成のために振動工学的な観点から翼振動解析手法を検討し,数値解析コードの構築と数値解析を実施した.流体中の翼振動は自励空気力と強制空気力を含む翼の振動方程式である空力弾性方程式の解として求められる.特にフラッター解析では,空力弾性方程式の固有値問題の解である空力弾性モードの振動数,減衰率,振動モードを求めれば良い.求解の方法として周波数領域法と流体-構造連成解析を検討し,本研究では流体-構造連成法と時間領域のモード同定法を組み合わせた新しい手法を定式化した.提案する同定手法は,流体構造連成解析により得られた翼振動履歴から線形化自励空気力を最小二乗推定することで空力弾性方程式を決定し,統計評価に基づく信頼区間と併せて空力弾性モードを算出するものとなった.本研究で用いる流体構造連成解析コードは,流体ソルバにレイノルズ平均圧縮性Navier-Stokes方程式の有限体積的解法を,固体ソルバに幾何非線形有限要素法を用い,境界条件により両者を結びつける様式を採用した.翼変形の取り扱いとして,静解析においては幾何非線形を考慮した解析を,振動解析では平衡点からの微小振動に対するモード合成法を用いた.翼の運動を表現するために流体ソルバにArbitrary Lagrangian-Eulerian座標系を用いた移動格子法を導入し,格子の変形は代数的手法または流体格子を弾性体とし有限要素法によりモーフィングさせる方法で行った.流体構造連成解析法および空力弾性モードの同定手法の検証として,理論解を信頼できる参照解と位置づけ,二次元平板単独翼と亜音速流中の零迎角平板翼列の曲げねじりフラッター問題を取り上げた.参照解はそれぞれTheodorsenによる自励空気力,WhiteheadによるLINSUBプログラムを用いp-k法で空力弾性モードを求めた.一様流流速をスイープした際の翼振動特性を数値解析と比較した結果,空力弾性モード振動数,減衰率,モード形状,フラッター限界流速について理論解析結果と良好な一致を確認し,フラッター現象に対して連成解析結果を用いたモード同定手法を用いて振動特性を評価できることを示した.本研究で提案する流体構造連成解析とフラッター解析手法のより実機に近い構成に対する応用例を示すために,NASA Rotor 67を題材とした連成解析を行った.まず静変形と定常流解析を連成させ,翼の空力的な変形が性能に与える影響を評価した.翼の静変形がファン特性に与える影響は小さいこと,連成の影響は低流量側の不始動状態で大きいことを示した.続いて行ったフラッター解析からは,低次5モードという多くの翼振動モードを取り込んでも空力弾性モードが精度よく同定でき,自励空気力に対応する翼面上の変動圧力を再構築することで局所的な流れ場が翼の減衰特性に与える影響を調べられることを示した.最後に,試験で生じるフラッターが提案手法で再現できるかどうかを確かめるため,部分回転数の低流量側作動点で失速フラッターが発生した遷音速ファンリグのCEFS1ファンに対するフラッター解析を行った.部分回転数の広範囲な作動条件で行ったフラッター解析の結果,高回転数側の80%,82.5%,85%回転数ではフラッター境界の位置が再現された.一方でリグ試験ではフラッターが生じない低回転数側の75%,77.5%設計回転数でもフラッターが発生する結果が得られ,試験結果を完全には再現できなかった.低回転数側の失速点付近で生じる旋回失速様の空力的不安定が生じる箇所を除けば空力弾性モードは精度よく同定されていること,フラッター境界には構造的な影響が小さいことより,流体解析に不一致の原因があることが考察された.不一致の原因を探るためにフラッター境界近傍で翼面上の空力減衰分布を詳細に観察した結果,フラッター発生には,流量減少に伴って正圧面の広範囲で空力減衰が損なわれること,負圧面前縁の離脱衝撃波足元が強い励振力として作用することの2点が関与することが示された.また,時間平均流れ場を観察すると,フラッターが生じない回転数では低流量側作動点で離脱衝撃波が消失し,大部分の翼高さ位置で前縁剥離が生じるが,フラッターが生じる回転数では励振側に寄与する衝撃波足元が翼面上に位置していた.以上より低回転数側のフラッター境界を決定づけているのは,回転数を下げた際,低流量側の作動点において離脱衝撃波が前縁剥離に切り替わり消失するタイミングであることが考察された.これをさらに理解するため,前縁剥離と離脱衝撃波の切り替わり近傍の非定常流現象について衝撃波足元の非定常流れ挙動を,高インシデンス条件でマッハ数をスイープしたLepicovskyらの翼列試験結果と非定常RANS解析結果をもとに考察した.そして離脱衝撃波が足元の大剥離とともに間欠的に前縁まで遡上する遷音速バフェットが,衝撃波足元の時間平均流れ場やフラッター解析結果に大きく影響する可能性が高いことを指摘した.以上,本研究ではターボ機械に生じる複合モード翼列フラッターについて流体構造連成解析法を用いて非定常空気力と翼振動を同時に解き,時間領域モード同定法により空力弾性モードを同定する,汎用性が高いフラッター解析手法を定式化して提案した.理論解を参照解とした検証より提案手法が適切に空力弾性モードを同定でき,フラッター解析に使用できることを示した.さらに実機に近い二種類の遷音速ファンリグについて静連成解析および翼振動解析を行い,翼変形挙動と性能変化の関係,モード同定が精度よく行える条件,遷音速失速フラッターの発生原因とその流れ場の特徴を明らかにした.また,試験と解析の不一致の原因と,関連する非定常流れ現象を考察した
内容記述学位授与大学: 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻 平成27年度 博士(工学) 課程博士 12601甲第32129号 博工第8667号 学位授与年月日: 平成27年9月25日
形態: カラー図版あり
Physical characteristics: Original contains color illustrations
資料種別Thesis or Dissertation
SHI-NOAA2440094000
URIhttps://repository.exst.jaxa.jp/dspace/handle/a-is/1308966


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