微小重力におけるメダカの挙動と視覚による制御

Abstract

1994年に予定される国際微小重力実験室(IML-2)に先立つ地上実験の1つとして、航空機を使用した放物線飛行を行い、短時間ではあるがμG下でのメダカ成魚の挙動を調べた。さらに研究室において、メダカを入れたガラス水槽の周囲に白黒模様の円筒を回転し、メダカの追従行動を調べた。小型ジェット機MU-300に実験装置を搭載し、1時間の飛行中に6-10回の放物線飛行を実施した。純系5系統および雑系メダカの成魚を用意し、水槽に入れてその挙動を明条件と暗条件とに分けて記録した。放物線飛行中のメダカの挙動を観察した結果、μG状態になるなりメダカの移動速度は急に増加し、μGの続く間は盛んな移動を行い、1Gレベルへの復帰とともに元のゆっくりとした速度に戻った。μG下ではメダカはすべて回転運動をし、移動速度の増加はこのような回転と同時に起こっている。明条件・μG下の回転運動に特微的なのはそれが腹を内側にして回ることである。しかも、詳細な観察から回転中のメダカには、ひねりも生じていることが分かった。他の系統のメダカについても明条件下での挙動を調べたところ、2系統は同じく回転運動を行ったが、他はまったく回転しなかったか、一部のみ回転した。暗条件・μG下ではすべての系統のメダカが回転運動を行った。また明条件で回転する魚が暗状態になると回転数の増加が見られた。これよりメダカは微小重力下において視覚によって姿勢を制御していると思われる。水槽実験においては、各系統のメダカの円筒に対する追従の仕方は個体により様々であるが、ガラス水槽内を大きく壁面に沿って勢い良く回っているグループと、中央をゆっくり回るグループとがあった。今回の解析ではこのような違いまでは考慮せず、ともに追従したと判定した。

In order to collect fundamental data for the experiments under microgravity in IML-2 (International Microgravity Laboratory-2), behavior of cyprinodonts was observed under microgravity, as well as with visual stimulation. Microgravity condition was achieved by parabolic flight, and cyprinodonts showed looping behavior with some twist as turning the ventral side to inside. There was a difference in looping pattern by strains of cyprinodonts in the light, while every strain of cyptinodonts showed looping behavior in the dark. This suggests that visual stimulation may be related with posture control under microgravity. For this reason, visual stimulation was given by rotating a cylinder with black and white stripes around a tank of cyprinodonts under 1 G. As a result, all strains of cyprinodonts followed the stripes, and among them, the strain with less looping behavior under microgravity showed the most remarkable ability to follow them. This suggests that the strain tolerant of microgravity have high sensitivity to visual stimulation.