スペースツーリズム(Space Tourism)研究事始

Abstract

いわゆる宇宙旅行について概説した。最初に宇宙利用の予想と現状について述べ、ついで日本ロケット協会の研究計画を、ロケットの課題および宇宙旅行実現のための研究分野に分けて解説した。旅客ロケット設計のための環境条件として、加速度、放射線、音響、無重量環境、気密、デブリ環境をあげ説明した。加速度については、ロケットは打ち上げと同時に推進剤を消費しはじめるので、発射後時間とともに自重が減少するから、推力に変化が無ければ加速度は次第に増加し、最後には非常に大きくなる。有人ロケットでは推力を時間とともに減らして、できれば一定の加速度で飛行することが望ましい。宇宙放射線については宇宙旅行をする空間、具体的には高度や軌道傾斜角によって大幅に異なる。宇宙旅行は高度200kmから可能であるが、この高度であれば飛行時間も考慮すると、SST旅客機と似たような条件といえる。したがって、将来のSSTの乗員と乗客に対する放射線対策が適用できるものと思われる。音響については、スペースシャトルに搭載されるスペースラブ内部の設計基準が打ち上げ時に134dB、上昇中126dBとなっており参考になろう。無重量環境については宇宙酔いが最大の関心事であり、その他医学的問題も考慮を要する。気密の問題については、現在の旅客機は気密構造が常識となっており、旅客は外の致命的な低い気圧に対して不安感はないと考えられる。ただ航空機では外の低い圧力の空気をそのまま取り込めばそのまま気密室で利用できるが宇宙旅行では空気の原料を持参し温度調節もする必要がある。デブリ環境については、いわゆる宇宙のゴミで旅客機に当たると大きな被害を生じるが、高度によって大きな差があり、200kmの高度では事実上デブリは無いものと考えてよい。以上の問題について明確な指針が必要であろう。

Space tourism means commercialization of manned space flight. From the early stage of space development, space commercialization is a profound theme in multidisciplinary fields, on the basis of a principle that the outcomes of advanced technique developed by tax should be returned to citizens. In these days, space satellite system in which users pay fee for utilization has succeeded commercially in business such as communication network or broadcasting, and an attempt has been made to observe the earth from outer space to resolve global problems, such as environmental destruction. There is also an increasing interest in space tourism, however, many obstacles should be overcome for the realization, especially the medical problems such as effect of acceleration, cosmic ray, noise or weightless condition. In addition, the space flight business should be managed on the commercial base so that reasonable cost and large number of passengers are essential. It is necessary to design rockets suitable for tourism. For attractive design, the policy of space tourism should be clarified.